魚類と水辺の生き物昭和30年代(1955〜1964)中ごろまでの三島の街中は、湧水が豊富で、蓮沼川や、源兵衛川、御殿川、桜川、また旧市街地の東の大場川には多くの魚類や甲殻類などが生息していました。アブラハヤ、フナ類、コイ類、ウナギ、ナマズ、アユ、エビ、カニなどです。これらを捕るために置針(おきばり)やモジリ、ハヤビンなどを仕掛けました。 また、楽寿園の小浜池には、放流されたマゴイや、ヒゴイ、ニジマスが群れをなして泳ぎ、堤下(つつみした)のはやの瀬、中の瀬、せりの瀬では、子供たちがアブラハヤやサワガニを追う姿が見られました。 水量が減少し、川の様相(ようそう)は変わりましたが、市民と行政、企業の協力で清流がよみがえりつつあります。市街地を流れる源兵衛川や中郷温水池と、大場川に生息する魚類や水辺の生き物を紹介します。 源兵衛川(げんべえがわ)(楽寿園から中郷温水池まで)最上流の楽寿園から三石(みついし)神社付近までの間は、移植されたミシマバイカモが根付いています。その清流をアブラハヤが群れをなしています。たまに、オイカワやニジマスの姿も見られます。日本で最も早い時期、4〜5月にゲンジボタルが飛び交うこの周辺地域の川底には、餌となるカワニナが生息しています。 少し下がった「水の苑緑地」には、口ひげが8本生えたホトケドジョウが生息しています。これは、絶滅が危惧(きぐ)されています。産卵は湧水のある浅い砂泥(さでい)底の水草の生えている場所で行われますが、源兵衛川水域でも、ごく限られた所でしかなされません。 中郷温水池に近づくにしたがって、少し水が濁っている水域に、オイカワ、モツゴ(クチボソ)、タモロコ(カキバヤ)が棲(す)んでいます。 冬にカモ類が飛来する中郷温水池には、人為(じんい)的に持ち込まれたものと思われるものを含め、多くの種類の魚が棲んでいます。 中郷温水池(なかざとおんすいち)オイカワ、トウヨシノボリ、スジエビ、キンブナ、オオクチバス(通称ブラックバス)、メダカ、ゲンゴロウブナ、モツゴ、ブラウントラウト、ハクレン、マナマズ、ニゴイ 大場川(だいばがわ)大場川の支流(沢地(さわじ)川、山田川、夏梅木川(なつめぎがわ))を遡(さかのぼ)り、山間部を湧水が小川となって流れるところの石をそっと除くと、サワガニがあわてて逃げ出します。本流の大場川には、放流されたヒゴイやマゴイが、群れをなしてゆうゆうと泳いでいます。春の産卵期には、支流の浅瀬でバシャバシャと音を立て、水草に卵を産み付ける姿が見られます。 夏、雨が降ると狩野川からアユが上がってきます。大水の出たあとの川岸の草むらには、フナやオイカワなどが、多数集まってきています。三島の川で、今一番多く見られると思われるオイカワは、もともとこの付近にいた魚ではなく、放流されたアユに混じっての移入で増えたものです。 大場川は狩野川に注いでいるので、アユと同じようにいったん海に降り再び川へ溯上(そじょう)してくる魚、オオクチバス(通称ブラックバス)やソウギョなど外来種も見られます。
その他、川や水辺に棲(す)む生き物
魚類メダカ(メダカ科)全長3cmの小さな体の割に眼が大きく、それが上の方についているからメダカ(目高)。池や田んぼ、用水路などに生息(せいそく)し、かつては水面近くを群れで泳ぐ姿がどこでも見られました。熱帯魚店で売られているオレンジ色のメダカは、ヒメダカといって観賞用の改良品種です。また、カダヤシといって、メダカによく似ていて蚊の幼虫のボウフラ退治に海外から移入された魚もいます。漢字で「蚊絶やし」と書きます。三島市民生涯学習センターの前の池で見られます。 アブラハヤ(コイ科)全長13cmでスマートな体型をして、ウロコが細かく主に黄色がかった褐色をしており、体の中央にぼやけた線が見えます。川の上中流や山間の湖沼に生息しますが、三島の街中の川で群れをなして泳ぐ姿が見られます。
コイ(コイ科)口元に2対のひげをたくわえ、どことなく威厳(いげん)をただよわせる顔つきをしています。川底のタニシやカワニナなどを砂泥(さでい)ごと吸い込み、のどにある頑丈(がんじょう)な歯でかみ砕いて食べてしまいます。成長すると1m以上になることも珍しくなく、淡水魚としては寿命も長く、70〜80年にも達するものもいます。なお、コイとフナの大きな違いは、ひげのあるなしにあります。 オイカワ(コイ科)全長15cmの体長で、青味を帯びたスマートな体に銀鱗(ぎんりん)を光らせる姿は、清流の貴公子といったところです。産卵期には雄に青色と赤桃色の婚姻色(こんいんしょく)が現れ、雌の奪い合いで雄同士の争いが見られます。ホトケドジョウ(ドジョウ科)全長6cmで、口ひげは4対あり、寸胴(ずんどう)な体型が最大の特徴であり、ダルマドジョウと呼ぶ地方もあります。池や沼、流れのゆるやかな川の水のきれいなところに棲みます。三島では、源兵衛川や境川で見ることできますが、数は多くありません。なお、コイの口ひげに対し、ドジョウの口ひげは、人に当てはめた場合、ドジョウひげといって、少し小ばかにした表現に使われました。 両生類ハコネサンショウウオ(サンショウウオ科)全長13〜18cm。背面が紫褐色(むらさきかっしょく)で頭から尾にかけて朱色の筋があります。腹部は赤みをもち紫褐色をしています。5〜6月ころに谷川の産卵場で数個の卵を含む卵のうを小川の岩穴の壁に産み付けます。幼生(ようせい)は渓流に住んでいて指先に爪を持っています。呼吸を皮膚で行うのが特徴です。 イモリ(アカハライモリ)(イモリ科)全長7〜14cm。背が黒く腹が赤いことで知られています。腹の鮮やかな赤色は、毒があることを知らせる警告(けいこく)色であると考えられます。イモリは敵に襲われると、皮膚から臭くて白い液を分泌しますが、この液が眼に入ったり粘膜(ねんまく)に触れたりするとひりひりと痛みます。本来身近な生物だったイモリは、今では平野部では見かけることがまれで、地域的な絶滅が進行しています。トノサマガエル(アマガエル科)全長5.5〜9cm。殿様の名にふさわしく、アマガエルの仲間の中でも大型です。オスとメスで体色が異なっています。オスは背中が金色ないし緑色で、背中の中央に緑色または黄色のラインがあります。メスは背中の中央に太くて白っぽい筋が目立ち、その両側は不規則に黒い波紋が散らばっています。世界的に大型のカエルが減少していますが、川原ヶ谷辺りで見られます。
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